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更新日 :2024年02月29日

かわいいバッグは、実はアップサイクル商品。上智大学発のブランドが目指すサステナビリティ

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「私が服を買うことで、問題に加担している」

服の大量廃棄問題を知り、ファッションが好きな上智大学の学生2人は心を痛めました。

ファッションを楽しみながら、問題を解決できないか。その思いから、2020年に「カルテナ」を設立。回収した古着を小物商品にアップサイクルする活動を開始しました。現在は他大学の学生も参加し、22人に拡大しています。

今回は、2024年4月に共同代表に就任する2人を取材。カルテナの新代表が見るファッション業界のサステナビリティとは?

サーキュラーエコノミーの実現を目指すユアマイスタースタイル編集部が共鳴した取り組みやプロダクトを訪ねていくシリーズです。

かわいい、かっこいいから環境問題へ

左から、野津萌さん、横田夏実さん

━━ お二人がカルテナに入った理由は?

野津萌さん(以下、野津):元々古着が好きで入りました。実はそこまで環境問題に興味を持っていたわけではなかったんです。だけど、カルテナを知って、こんな可愛い商品を通じて環境問題にも関われるんだと驚きました。それまでは環境問題を堅苦しいものだと捉えていましたが、とても身近に感じ、私もやってみたいなと感じました。

横田夏実さん(以下、横田):私も環境問題をメインにしたかったわけではなく、どちらかというとファッションに興味がありました。ファッションショーを開催する団体や、オリジナルでブランドを作るサークルなど色々検討したのですが、環境問題を解決しながらもファッションに関わる団体を初めて見て、興味が湧いてカルテナに入りました。

━━ お二人ともファッションが好きというところから入ったんですね。

野津:そうですね。カルテナも、かわいいとかかっこいいとか、その商品自体にまず魅力を感じていただいて、そこから環境問題に関心を持ってもらうことを大事にしています。

色々な人が、手に取りやすい商品を

━━ 服の大量廃棄問題には、色々なアプローチがあると思います。なぜアップサイクルの小物に注目したのでしょう?

横田:まず、日常的に身につけるものを商品にしたいという思いがありました。 サステナブルな活動は、習慣にしないとなかなか続かない。そこで、毎日目に入るところにアップサイクルの商品があることで、その人の購買活動に影響するんじゃないかと考えたんですね。

過去には、リメイク服の販売を考えたこともあったそうです。ただ、洋服だと、特定の性別や特定の層にターゲットが絞られてしまう。そうすると、私たちの商品が広まりにくい。だから、性別や体格、好みにあまり左右されない小物を製作する形になりました。


カルテナのポップアップの様子

━━ 価格がお手頃ですよね。そこにも理由が?

野津:若い世代に服の問題に興味を持ってもらいたいという思いが根底にあります。ほとんど利益は出ていませんが、服の大量廃棄問題を 1人でも多くの人に広めるという理念を優先しています。

エシカルな商品を、手の届きにくい価格のために諦めてしまう人も多いと思うんです。だから、買い求めやすくすることで、入口を低くすることは意識していますね。

━━ 購入した方からの反応は?

横田:ハンドメイドだから不安だったけど、生地や作りがしっかりしていると褒めていただくことが多いです。長く使えるように、しっかり作っているので嬉しいです。

あと、商品のタグにQRコードがついてるんですが、読み取ると元の古着の画像が出てくるんです。それを見て面白いとおっしゃる方も多いですね。

100%完璧にはできないことを恥じない

━━ 商品販売だけでなく、出張授業もしていますね。

横田:先日は、企業に依頼されて高校生に授業をする機会がありました。企業が環境問題について伝えるより、私たちみたいな、企業と学生の間になる存在が授業をすることで、身近に感じやすくなるとお褒めの言葉をいただきました。

出張授業では、簡単なアップサイクル体験をすることもあり、さらに自分ごとになりやすいかなと思います。

野津:学校でもSDGsなどを学ぶ機会が増えています。私が高校の時も授業がありました。小さい頃からサステナビリティへの意識を身につけることで、それが特別なことではなく、普通なこと、意識が高いことではなくて、日常生活のごく一部になっていくのはすごくいいなと思います。だからこそ、カルテナも出張授業には力を入れています。やっぱり次の社会を作っていくのは次世代の方なので。

━━ 活動を通して、服の大量廃棄問題や環境問題について考えたことは?

横田:環境問題へのアプローチと、活動を広げることのバランスが難しいなと感じています。例えば、ポップアップで、ポスターやチラシをたくさん印刷して配りたい。一方で、なるべくゴミを出さないようにしたいという思いもあります。

商品を販売する取り組み自体にもそれは感じます。今後カルテナがありがたいことに人気になっても、私たちが大量生産・大量販売して、商品が捨てられてしまったら意味がない。

━━ 多くの企業や団体も、その課題を抱えていそうですね。どう対応したらいいんでしょうか? 

横田:全てを100%頑張る必要はないという考え方はあります。その上で、できなかったことを隠すのではなく、今できることを提示していくのが大事かなと。

例えば、イベントではどうしてもゴミが出てしまうけれど、リサイクルできる素材を使っていますと提示する。全てを完璧にはできないことを恥じる必要はなく、できることをする姿勢に誇りを持つのがいいかなと思っています。

━━ 野津さんは活動を通じて変化したことはありますか?

野津:服を買う時は、選択肢にエシカルファッションを入れるようになりました。今は古着という選択肢も身近です。メルカリでも買えますし、ZOZOTOWNでもZOZOUSEDとして売っています。受注生産もいいと思います。頼んだ分だけしか作らないので、在庫の無駄がないですよね。

環境問題に関する知識は深まっても、服が欲しい思いはなくなるわけではないので、サステナブルなものを選択肢の一つとして入れてみるのがいいと思います。

横田:着なくなった服をどうするかという選択肢を考えてもらうのも取り組みやすいですよね。ただ捨てるんじゃなくて、フリマアプリで売るとか。最近は繊維リサイクルもできるので、繊維として買い取ってもらうとか。それこそカルテナに持ってきてもらうとか。色々な形があります。

SDGsという言葉が一人歩きしている

━━ ファッション業界の意識の変化は感じますか?

野津:色々な問題が明るみになって、社会全体が変わってるなと感じています。アパレルブランドさんも、サステナビリティ関連のポップアップイベントをしたり、古着のリメイク品を販売をしたり、すごく嬉しいことだと思います。

ただ、一過性のイベントで終わっていないかという疑問はあります。表現して終わりではなく、たとえ規模が小さくても継続的にやることが1番大事ではないかと思います。

横田:私も、環境問題に関する団体に所属していることもあり、すごく変化を感じます。一方で、社会全体を巻き込めているかというと、そこまでではないかなとも感じます。

最近は、SDGsという言葉だけが1人歩きしている状況もあると思います。野津も言ってた通り、継続的に、活動の根本を伝えていくことが1番重要なんじゃないかなと。 グリーンウォッシュと言われるように、表面上の活動も増えている気がしています。そういう人たちにも、私たちのような団体が丁寧に服の問題を伝えられたらいいなと思います。

━━ カルテナとしてこれからどう展開していきたいですか?

野津:学生団体なのにすごいと言われることもあるのですが、それよりも一つのブランドとして捉えてもらえるように頑張りたいです。そのために、販売サイトももっと洗練させたいですね。

横田:新しい試みとして、オーダーメイド製を導入しています。キャッチコピーは「その形は変わっても思い出は変わらない」。思い出のある子ども服や、おばあちゃんがよく着ていた服を、私たちの手でアップサイクルして、日常生活で使えるものに変えるサービスです。オーダーメイド自体がもっと身近になったら嬉しいので、ぜひ広めていきたいです。

◇◇◇

服の大量廃棄問題は環境や労働の問題も絡み合う重要な問題で、好きな服を着ることに罪悪感をもつ人もいるかもしれません。

しかし、服の大量廃棄問題に真摯に向き合う野津さんと横田さんは、とてもファッションを楽しんでいました。

服を楽しむ気持ちに寄り添いながら、ファッションの未来を切り拓いていくカルテナに、今後も期待が集まります。

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