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更新日 :2024年07月23日

履き心地の良さにリピーター続出「靴から会話が生まれる」Allbirdsの魅力とは?

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「世界一履き心地が良い」とも評された靴を知っていますか?

サンフランシスコ発のシューズブランド「Allbirds」は、機能性やデザイン、サステナビリティの面で優れていることから、ファンが急増。セレブリティたちが愛用していることでも注目されました。

日本には2020年に上陸し、原宿、丸の内と大阪梅田に店舗を構えています。

今回は、Allbirds Japanのマネージング・ディレクター蓑輪光浩さん* を取材し、人気の商品や、サステナビリティについて伺いました。

*2024年6月より(株)ゴールドウイン オールバーズ事業部所属

サーキュラーエコノミーの実現を目指すユアマイスタースタイル編集部が共鳴した取り組みやプロダクトを訪ねていくシリーズです。

ブルーノ・マーズも愛する機能的な人気商品

Allbirds Japanのマネージング・ディレクター蓑輪光浩さん。取材は丸の内店で行いました

━━ 私はAllbirdsのフラットシューズを愛用しているんですが、履き心地がよくていつも履いています。

フラットシューズ(ツリーブリーザー)は大人気ですね。足の形が合う方に限りますが、リピーターがとても多いです。購入した翌週にまた来店して、違う色を買っていただいたお客さんもたくさんおられます。

━━ 他にはどんな商品が人気ですか?

ランニングができるツリーダッシャーが人気です。普段だけでなく、出張先や旅行先でアクティブに動きたいときにもぴったりです。最近はお仕事でもスニーカーを履く方が多いので、通勤用に真っ黒のカラーを買われる方が多いですね。ブルーノ・マーズも来日したときに原宿店で買っていったんですよ。

あとは、もちろんウールランナー。Allbirdsの歴史が始まった靴です。ずっと支持されていますが、夏は少し暑いので、メッシュ素材のツリーランナーゴーがいいかもしれないですね。

ツリーダッシャー2をはじめ、人気商品が並ぶ店内

━━ サステナブルなところもAllbirdsの靴の大きな特徴です。

なるべく石油系ではなく、天然の素材を使っています。例えば、ソールはサトウキビ由来です。それから、ツリーダッシャーやツリーランナーのメッシュ部分は、テンセルで、ユーカリをベースにしているのが特徴です。

━━ 植物を使っているんですね。

植物は、光合成をしますよね。つまり、二酸化炭素を吸って、炭素を固定して、酸素を吐き出します。生産過程において、植物性の素材は二酸化炭素を吸収できるんです。

ユーカリとサトウキビは、灌漑設備を使わず雨水で育つこともポイントです。日本は蛇口をひねればたくさん水が出てきますが、そうじゃない国も多いですから。

さらに、靴紐はペットボトルからできています。左右2本で、1本のプラスチックペットボトルを再生しています。

━━ 全商品、洗濯機で洗えるのも嬉しいです。

長く使うことがサステナブルであるというのが、Allbirdsの1つの理念としてあります。新しく買っていただくことはもちろん嬉しいけど、やっぱり商品に愛着を持って長く使っていただきたい。だから手軽に洗濯できるようにしています。

気候危機問題について食卓で会話を

━━ 創業時からサステナビリティを意識していたんですか?

まず、Allbirdsはティム・ブラウンさんとジョーイ・ズウィリンジャーさんが創業しました。

ティムさんは、ニュージーランド出身の元プロサッカー選手です。サッカー選手としてメーカーに提供される靴をたくさん履く中で、もっとシンプルな靴がほしいと思っていた。

一方、ジョーイさんは、エコなバイオテクノロジーや化学品を販売していました。しかし、「エコなのはわかるが、値段が折り合わない」とビジネスの現場では見送られてしまう傾向がありました。その経験からBtoBではなくBtoCのビジネスがしたいと思っていました。

そして、ティムさんがサッカー選手を引退して、靴を作り始め、独立するというときに、2人は出会いました。当時の2人のガールフレンドが友達で、2人を引き合わせたんです。そして、2016年にサンフランシスコで起業し、ジョーイさんの知見を生かしながらサステナブルな靴が生まれました。

━━ サステナビリティを追求する背景は?

Allbirdsでは孫の世代まで誇れる仕事をしましょう!とよく言っています。そのために、気候変動の問題に対応しなくてはいけません。

今、気候変動の影響はダイレクトにきています。数年前、Allbirdsのサンフランシスコ本社は窓が開けられなかった。山火事で匂うからです。日本にも毎年大型の台風がきたり、魚が取れなくなったりと影響が現われてますが、日本全体で気候変動への危機感は少ないですよね。

欧米の人たちと話すと、気候変動が食卓の話題に上がるそうです。そこで、お子さんたちが怒るんですって。おじいちゃんの世代が石油を大量に燃やして気候変動が起きていて、それが何も解決してないのに、年金の話ばかりしていて、俺たちのことは考えてくれていないと喧嘩になる。

━━ はじめはサステナビリティじゃなくてもいい。

Allbirdsのお客さんには、なるべく理解していただきたいと思っていますが、高い思想だけでは響きません。野菜だって、オーガニックだから選ぶわけではなくて、美味しいオーガニックの野菜だから選びますよね。靴も、履き心地やデザインがいいという人間の感性がはじめにあって、その後にストーリーやロジックがつくんじゃないでしょうか。

そうすることで「いつもこの靴履いているね」と言われたときに、履き心地がよくて気に入っているという話をしながら、「実はなるべく地球に影響を与えないように作られてるんですよ」と会話が始まるかもしれない。色々な会話のきっかけをAllbirdsは作ろうとしています。

年間200億足が生まれ、捨てられる靴

━━ 他にもサステナブルな取り組みがあるんですよね?

日本で年に2回実施している天然藍染めのワークショップがあります。徳島県の染師・渡邉健太さんに協力してもらい、藍染めの液を店舗に設置して、お客さんが自分の手で靴を染めるんです。

きっかけの一つは、お客さんに「洗濯しても汚れが落ちない」と言われたことでした。靴は洗濯しても、いずれ真っ白にはならなくなる。じゃあ藍染めをしましょうと。

自分で藍染めをするので、ちょっと液垂れしたりと、綺麗には染まらないことがありますが、誰も文句を言わないです。自分の手を汚して作ると愛着が生まれるんですよね。

━━ 藍染めすることで長く履き続けられるんですね。

物を大切にすることをバリューに持っている方は、捨てるのは忍びないじゃないですか。服は企業や地域で回収する仕組みがありますが、靴はあまりないんですよね。つまり、循環できていない。

服に比べてコンポーネントが複雑なことが原因です。ソール、アッパー、靴紐と違う素材だから、分解して再利用するのが大変なんです。

━━ 再利用が難しいからこそ、一足一足を大事に履くのはより重要ですね。

人々が買う量と、捨てる量はあまりにも膨大です。靴でいえば、世界で年間200億足ぐらい作られている。そして、200億足が捨てられてるんです。「本当にその靴は必要ですか」「今の靴を少し長く使えませんか」と問いたくなります。

ただ、ファッションはやっぱ楽しまなきゃいけない。新しいものを買いたいのはわかります。ただ、買うときは、ストーリーを理解することが大事だと思います。

車や家を買うときはすごく吟味するけど、300円のアクセサリーはすぐに買ったりしますよね。でも、金銭的な価値に関わらず、どう作られたのか、誰が作ったのかとストーリーを掘り下げるべきではないかなと。

海で遊ぼうと気軽に言える環境を

━━ 2025年までにカーボンフットプリントを50%削減、30年までに0に近づけることを目標にしています。進捗は?

今のところ順調です。カーボンフットプリントが多いのは、素材調達と製造なので、製造時のエネルギーを再エネに変え、素材には再生型農業を取り入れることで削減しています。

まだまだ努力することはたくさんあると思っています。例えば、靴の箱は半分ぐらい空気ですよね。それをもっとコンパクトに、軽くできるかもしれない。

人気No.1のウールランナー2。すべての商品にカーボンフットプリントが記載されています

━━ Allbirdsはレシートの電子化、ショッパーの削減など細部まで工夫されています。

ちっぽけなことかもしれないけれど、そこまで考えてやっていかないといけない。そうしないと、自分たちの世代は大丈夫でも、孫の世代になった時には関東でパイナップルが育ちますよ。

僕らがレジ袋を1枚使わなくなってもあまり変わらない。でも、そうすることで、レジ袋を作る人と作らせる人が変われば大きく変わる。個人のアクションも大事だと思います。

━━ 個人や企業が小さく動いていくことが、変化につながるんですね。

そうです。ただ、気候変動の問題は1人、1企業、1政府では解決できず、みんなの知恵を集めないといけない問題でもあります。そのために、自分の業界だけでなく、コネクションを広げていくことを大事にしています。

開発した素材をオープンソースにしているのもその1つです。Allbirdsが共同開発したプラントレザーという植物性のレザーは、自動車業界が使い始めています。まだまだ改善の余地のある素材なんですが、自動車に使うために品質が高められています。技術をオープンにすることで、色々な業界の方が入ってきて、進化できるんです。

━━ 今後の目標は?

世代を代表する靴を作りたいですね。ウールランナーはその一つだと思いますが、ウナギのタレみたいに熟成し、このタレはここにしかない、このフィット感はここにしかないという商品にしたい。

そして、サステナビリティです。僕は今まで他のシューズやアパレル企業でも働いてきて、大量生産・大量消費を煽るような広告を作ったこともありますし、自分もそういう生活をしていたことがあります。その罪悪感があるので、自分自身も、理解してくれる方も、一緒に行動を変えていけるようにしたい。

今、無邪気に過ごしている子どもたちが大きくなって、さらに子どもができたときに、「スキー行こうよ」「海で遊ぼうよ」って気軽に言える環境を守ってあげたいんです。

◇◇◇

会話のきっかけをつくりたい。

Allbirds丸の内店には、サステナビリティへの理解が促進されるような工夫がされていて、その想いが随所に感じられました。

まずは店舗で、履き心地の素晴らしいAllbirdsを体験してみてはいかがでしょうか。

Allbirds 公式オンラインショップ

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