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更新日 :2019年08月07日

【プロが認めた匠の技】造園家・湊 真人さん

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造園から緑化・植栽などトータルランドスケープをめざして

トータルランドスケープを標榜し、造園から緑化・植栽など幅広い業務を展開している、株式会社耕水・代表の湊真人さんは、40年近くに渡って第一線の造園家として活動し、個人邸の作庭では日本屈指の実績を持っています。

造園に取り組むにあたって、湊さんは「技術はもちろん大事ですが、それ以上に心の持ちようを大切にしています」と言います。

「修行時代は『技術を磨いて一流になりたい』と無我夢中で技の修得に励みました。ところが、技術が上がれば上がるほど、技術を使って何を表現するかを考える心が大切だと気づかされ、思索や勉強を通じて心を磨く時間を持つようになりました。そうして得た新たな境地で作庭に取り組むことで、技術にもさらに磨きがかかっていきます。」

「心と技術はお互いに高め合っていくのですが、基本はやはり造園と対峙する際の心の持ちよう。 最近つくづくそう思います。」


T邸エントランス


オートキャンプ場の植栽


作業中の湊さん

技も心も磨くのが一流ではないか

湊さんは、吉田茂邸を始めとする数々の著名人邸や世界各国の日本大使館の作庭などを手掛けた造園家・中島健氏に師事して庭の基本を学び、同時に草月流の中村光波氏から華道の手ほどきを受けることで造形への感性を身につけるなど、修行時代から一流の人々から学ぶ機会に恵まれてきました。

そうした方々と接することで「一流と言われる人ほど、技術と同時に心も磨いている」ことを間近に見てきたことも「心」を大切にすることにつながっているのでしょう。


O邸の庭 1


O邸の庭 2

ふとした変化も庭の一部

取材中に「外の庭に蝶々が飛んできましたよ」と言われて、思わず蝶の舞に見とれた我々

に「小さな蝶が現れただけで庭の見え方が違ってくるでしょう。人生は偶然による変化の中にいるわけで、庭はそういうことを感じてもらう場所にもなり得るのです」と語られた湊さんの穏やかな笑顔に、私たちも暖かな気持ちになりました。

「私たちは、自然が造形した葉っぱ一枚、花一輪さえ創り出すことができません。与えられたあるがままの姿を受け入れるしかないのですが、それを踏まえた上で、庭を愛でる施主さんの価値観を映し出すような庭にするにはどうすればいいのか・・・作庭は、どこまで行っても勉強の連続です」

「庭を見ることで、日々移ろう季節や陽の光・風などを感じて、今日この時間・この空間にいることに静かな喜びを覚えられる・・・そんな庭をお届けすることができたとすれば嬉しいですね」


T邸エントランス


T邸アプローチ

作庭を極める

施主にとって「庭を眺めて過ごす」一瞬の時間が、かけがえのない素晴らしいものであってほしいし、そのために、自然から与えられたものに人がどう解釈を加えていけばいいのかを常に考えている湊さん。

庭創りの心を真摯に語る湊さんからは、哲学的な佇まいさえ感じられます。

「大げさかも知れませんが、作庭とは、生きるとは何たるかを表現することにもつながるのです」という言葉が、聞いている私たちの心に沁みこんでいきました。

株式会社耕水
http://www.k-kousui.co.jp/


浜御崎


Y邸

取材後記

「庭の7割は施主さんご自身とご家族のため、でも3割は外を歩く人・街の人々のために造ってあげたいのです」と話される湊さん。

湊さんが創られた庭を眺めることのできる施主さんがうらやましい・・・そう思わせるインタビューでした。 (取材:上野)

私が推薦します

建築家
佐藤 哲也・布施 木綿子

「森の人」・・・尊敬の念を込めて、湊さんをそう呼ばせて頂いています。

おおらかな自由人といった雰囲気があり、実力をひけらかすことなく若手建築家や施主に対しても実に朗らかに接して頂けます。

それでいて会話の随所に博識で哲学的なコメントが散りばめられている・・・そんなスケールの大きさを「森」という言葉で表現したのです。

庭を設計する際には、施主の希望に耳を傾ける一方で、建築及び周辺地域を俯瞰しながら最適な庭をご提案頂くのですが、その本領は最終的に現場で、手を動かしながら見事に発揮され、それはまるでプロの詰将棋を見ているかのような気がします。

そして何より、湊さんのつくる庭には、いのち・宇宙があると感じられるのです。

過去15年以上に渡り、湊さんとの庭づくりを通して育てられても来ました。

これからも“森の人”たちと共に、豊かな生命の巡り・歓びのある場所を、増やしていけたならと思っています。

佐藤・布施建築事務所
https://www.pla-navi.com/architects/office/439/