今回は、染み抜きの中でも手ごわさは最難関、墨汁のお話です。墨汁って気を付けても、いつのまにか肘や袖についてしまうもの。問題は、1度ついてしまった墨汁の染みが本当に落ちにくいこと。そのため前提として、クリーニングに出すことをオススメします。ただ、まずは自分で落としてみたいという方にむけて今回は、そんな墨汁の染みを抜く最強メソッドをご紹介。何を使えば染みが抜けるのかの実験、そしてお家にある意外なものを使った染み抜き方法をご紹介しますね♪
目次
結論墨汁が落としにくいのは、不溶性だからです!でもこれはどういう意味でしょうか?例えば、コーヒーや醤油の染みは水溶性。口紅やチョコレートなどの染みは油溶性。
水溶性の染みは、文字通り「水に溶ける」ため、洗剤と水で洗えば落ちます。油溶性の染みは、「油に溶ける」ため、クレンジングオイルなど油性のもので溶かして落とすことができます。
しかし、墨汁などの不溶性の汚れは、水にも油にも溶けません。それどころか、水で洗うと汚れが広がってしまう可能性があるのです。墨汁の主成分はカーボンブラックという炭素でできた黒い顔料、そしてニカワという接着剤と水です。
このカーボンブラックは小さな粒子であるため、服などにつくと繊維の間に入り込んで、大変落ちにくくなってしまいます。これは、困りました。
墨汁の染みを抜くには、この炭素の粒子を取り除く必要があるのです。それでは、炭素の粒子を取り除くには、どのような方法が効果的なのでしょうか?
さて、墨汁の染みって結局何を使えば落とせるのか明らかにしよう!と意気込んだ私は、とある実験をしてみました。
それは、墨汁の染みに洗剤6種類をつけてみて、どれが最もキレイに染みを落とすのかを確かめよう、という実験!洗剤6種類というのは、こちら。
これらの中で、どれが墨汁の染みを最もキレイに落とせるのか、実験してみました。
はじめに、墨汁で汚れることが一番多いであろうYシャツを12枚に細かく切ります。そして、1枚ずつ墨汁を垂らします。
こんな感じです。
墨汁を垂らして、6枚は30分置きます。そして、もう6枚は1日置きます。
上で挙げた6種類の洗剤を、染みの上に垂らして5分間置いておきます。
最後に、水でもみ洗いして完了です。さて、結果はどうなったのでしょう?
それでは、結果を発表します。もう一度見せますね。染み抜き前はこんな状態。
黒々としてます。落ちるわけありませんよね…。私もそんな気がして不安です。
さて、初めに墨汁をつけてから30分間置いた状態から染みを抜いたものがこちら。
結果を見て、愕然としました。ほぼほぼ効果がありません。クレンジングオイルを使ったものが、かろうじて薄くなっているかな…という程度。さて、まだ望みを捨てずに。1日放置したものも見てみましょう。
まあ、30分放置したものでさえほぼ落ちていないので、希望を持つのも難しいのですが…。1日放置したものが、こちら。
うーん。こちらもクレンジングオイルや除光液を使ったものが、少し薄くなっているかな、という程度。それどころか、黒ずんだ汚れが周りに広がってしまっています。というわけで、実験は失敗。
それではどうやって墨汁を落とせばいいのでしょうか?
え?この方法、とっても意外ですよね。でも、炭素の粒子を服の繊維から取り出すには、歯磨き粉の研磨剤とお米の吸着力が有効。一見何かの迷信っぽいですが、そう聞くとかなり説得力がありませんか?
まずは、歯磨き粉を使った方法からご紹介しますね♪
・汚れてもいいタオル
・使い古しの歯ブラシ
・歯磨き粉(研磨剤の入っているもの)
・台所用中性洗剤
使い古しのタオルを下に敷いて、染みの部分を上にした状態でのせます。
歯磨き粉を、染みの部分に直接載せます。このとき、必ず研磨剤の入った歯磨き粉を使ってください。
使い古しの歯ブラシで控えめに擦ります。控えめに、というのはつまり、墨汁の染みを広げないように狭い範囲で、ということです。
歯ブラシでこすった後、台所用中性洗剤で軽くもみ洗いします。この時も、汚れを広げないようにしましょう。
染みを抜いた後はいつもどおりの洗濯をしましょう。洗濯機なら洗濯機で、手洗いなら手洗いでOKです。とにかく、墨汁の染みを広げないように、を意識しましょう。歯磨き粉の研磨剤で、墨汁をかきだすイメージです。
さて、それでも落ちなかった場合。この場合は、最後の手段です。お米のねばねばで炭素を吸着して、歯磨き粉も使う方法をやってみましょう。
タッパーやお皿にお米を入れ、上から台所用の中性洗剤を垂らします。これを、お米を潰しつつ歯ブラシで混ぜ合わせてペースト状にしていきます。
下にタオルを敷いて、染みのついた部分を載せます。染み部分にペーストを載せ、墨汁汚れを広げないようにトントン叩きます。
1度、歯ブラシをキレイにしてから歯磨き粉をつけ、染み部分を少し擦ります。
染み部分を、水でもみ洗いして流します。
揉み洗いが終わったら、いつも通り普通に洗濯します。これで、完了。液体洗剤で洗っても、固形石鹸で擦っても落ちない墨汁汚れ。汚れの正体を識別して、正しい染み抜き方法をすることが重要なのです。
色柄物に墨汁が着くと面倒くさい事に。漂白剤などで落とすと色落ちしてしまう可能性があるので、気になる方はチェックをしてください。
裾などあまり目立たないところで洗剤をつけてしばらくした後にタオルで拭き取ってみましょう。色が落ちていれば染み抜きは色落ち覚悟でやる事になります。
とはいえ、今回の歯磨き粉、お米、中性洗剤を用いた方法であれば色落ちはしないのでその方法で行いましょう。
そもそも墨汁がついても大丈夫という工夫をおこなっておけば、万が一ついても対応できますね。今回は墨汁自体を変える、服装を工夫するの2つの方法をご紹介します。
最近は、家庭での洗濯で落とせるタイプの墨汁が、販売されています。毎回服を汚して帰ってくるからストレス……という方は選んでみましょう。便利な洗える墨汁ですが、若干色合いが違うため、清書には向いていません。
時間が経つと色が薄くなるため、練習には洗える墨汁、本番は普段の墨汁と、使い分けるのがおすすめです。
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10分つけ置き後に洗濯するだけで、汚れが落ちる書道液。洗えるタイプですが、洗濯は早めに行うようにしましょう。
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注入の際の泡はねも防いでくれる墨液。専用半紙を使用すれば、より快適に練習できます。
例えば黒色の服を着ていれば万が一、墨汁がついてしまったとしても見分けがつきにくく、そこまで気になることはないですね。あるいは書道用に汚れてもいい服を買っておき、それを着ても対策になります。
加えて、服の素材という観点からも工夫ができます。例えばポリエステルやウール素材の洋服は墨汁が落としやすいという特性を持っています。そのため該当素材の汚れてもいい服が一番書道に適しているかもですね!
歯磨き粉やお米の方法を試してみたけれど、汚れが落ちなかったり、やり方が大変そうだからちょっと面倒だったり。そんな時は、プロのクリーニングへ依頼しましょう。
衣類の汚れを落とすプロであるクリーニング店なら、憂うつな墨汁汚れもすっきり落とせます。なぜ、プロは頑固なあの汚れを落とせるのか。その秘密や、依頼する際の注意点に迫ってみましょう。
プロのクリーニングで墨汁汚れを落とせる理由は、繊維に合った対処ができるからです。墨汁をはじめとする、不溶性の汚れへ普段から対応していること。専用洗剤を持っていること。
素材に合った落とし方を知っていることなど、プロならではの目線で早急に汚れ除去してくれます。墨汁汚れ落としの方法は、業者によってさまざま。
ですが、どのクリーニング店を選んでも、漂白剤を使う場合は生地を傷めないように配慮してくれるなど、汚れ部分へのみ、ピンポイントにアタックしてくれます。
墨汁は、プロでも難易度が高い汚れのため、その方法を公表していないお店や業者がほとんど。得意、不得意もありますので、まずは汚れた衣類を持ち込んでみて、落とせるかどうかチェックしてもらうのがおすすめです。
墨汁汚れをプロのクリーニングへ出す場合、できる限り速やかに持ち込むようにしましょう。墨汁のシミが乾いてしまうと、落とすのが困難になります。
できるだけ早く、きれいに落としたいなら、急ぎでお願いするのが正解です。
自分で対処してしまうと、汚れが奥へしみ込んでしまう可能性があります。クリーニングへ依頼する場合は、触らず、そのままの状態で持っていきましょう。プロであっても落とすことのできない、墨汁のシミもあります。
多くの場合はかなり薄くできますが、完全に落ちないケースがあることも、覚えておきましょう。
さて、いかがでしたか?実験が大失敗したのはとっても残念ですが、洗剤や石鹸では効果がないこと、わかっていただけたでしょうか?ポイントは墨汁が不溶性の汚れであること、です。
洗剤ではなく、研磨剤とお米の吸着力に頼って落としましょう。それでも落ちない場合は、クリーニング屋さんへ持っていくことをおすすめします。ただ、クリーニング屋さんでもたびたび手こずるこの汚れ。仕方ない部分もあります。
墨を付けて帰ってきたお子さんも、悪気があってつけているわけでありません。くれぐれも怒りすぎないようにしましょうね。